伝統を今に次世代漆塗り製品で新たな分野へ
漆塗り生地布胎漆器
布
天保3年から、会津若松市で会津漆器と共に歩んできた歴史ある鈴善漆器店。会津人のものをつくる心と、ひたむきな技術革新で、使う方の心に寄り添った丈夫で長持ちする会津漆器・会津塗製品を作っています。現在、伝統産業は、日本人のライフスタイルの変化から革新を求められています。そのような中、鈴善漆器店は新しい分野の開拓として、ひとつの挑戦を始めました。布と漆を融合させた次世代の漆製品です。当初、自社の製品である重箱を包む風呂敷を、漆塗りを施した布で作れないか、というアイデアからスタートしましたが、課題は相応にありました。元々、布と漆を合わせたものは存在していたものの、それらは布を固め
るために使われており、造形物などの強度を高めるための漆。鈴善漆器店の挑戦は、それを見た目や漆の良さ、機能性を持たせた衣装としての製品にすることです。ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの協力も得ながら、約3年の月日を掛けて開発した製品が「布胎漆器(ふたいしっき)」。固まる漆を布に塗っても曲げる事ができ、割れや剥離、ヒビなどが入らない漆塗りの布が完成しました。現在はアクセサリーや名刺入れ、ブックカバー、御朱印帳に使用し、店頭の商品ラインナップの幅が格段に広がっています。漆の良さだけでなく、衣装をも意識した開発は、伝統が現代に生きる瞬間を見せてくれました。
● 割れや剥離、ヒビが入らない漆塗りの布